- ―八女総合病院では、親子のきずなづくりのためにどのようなことに取り組んで
いらっしゃいますか?
- 当院では3D超音波を導入しています。
これは学術的な意味よりも絆づくりのためと言ってもいいでしょう。
もちろん、赤ちゃんの状態を見るという大切な役割もありますが、エコーの記録についても、同じものを2枚プリントし、1枚には解説(ここがお鼻で・・という風に)をつけてお渡ししています。
より分り易く、お父さん、お母さんに訴えるものがあると思うんです。
超音波で見ると赤ちゃんがお腹の中で笑っていることもあります。
出産後すぐの笑顔はエンゼルスマイルといい、反射的な表情であって、本当に楽しいから、嬉しいから笑っているのかは分かりません。
ただ、赤ちゃんのあの笑顔はきずなづくりには非常に有効ですよね。
お腹の中の赤ちゃんへ呼び名をつけるのも良いことです。
他にも、胎動が始まる前から実感が湧くように、赤ちゃんの心音を聞く機械をレンタル出来るところもあります。
胎児と音ということで日本医科大学の室岡一先生が「赤ちゃんも人間である」ということで、音楽を聞かせる胎教について発表され多くの研究がされていますね。
- ―積極的に情報を収集され、実践していらっしゃるのですね。
-
そうですね。海外へも視察へ行きました。
例えば上海は100%共稼ぎです。朝食から屋台を利用し、幼稚園に通っているような子どもたちも個食という生活スタイルです。家族の食事がバラバラということで、日本よりもコミュニケーションとることが難しそうですよね。
出産については、4〜6万円で産める施設もあります。
そういった施設は1日に100〜130人来ても拒否ません。
しかし、その分、お部屋ではなく廊下に寝かされたりすることもあり、扱いが悪いようです。
逆にお金のある人は、100万円近くても良い施設を選択するというように費用によって歴然の差があります。
- ―現在の日本の産科医療についてはどのように考えていらっしゃいますか?
-
日本の産科医療は崩壊しつつあります。
現在の形を維持するのが難しいので、1度古いものを捨てて新しい形の医療を考える必要があると思います。
福岡でも多くの施設が分娩の取り扱いを中止しています。助産師をむやみに増やすだけでは駄目です。院内助産院もまだまだ課題は多くあります。
そもそも日本では安全に産めることを軽く考え過ぎです。
だから1度も健診を受けず、飛び込みでお産をするような人がいるんでしょう。
本来は赤ちゃんとお母さんの命のかかった大仕事です。
「産めるだけでありがとう」という意識を持って頂ければ大きく変わると思うのですが。
医師の手当を増やすだけではどうしようもないですが、あれば少しでも崩壊を先延ばし出来るかもしれません。
課題は山積みですが、少しでも多くの情報を集め、出来ることには積極的に取り組んでいきたいと考えています。
− インタビューを終えて −
九州で生まれ育った私でさえ、「九州男児」というと亭主関白で家のことは奥さんが・・・というイメージがありました。
しかし、最近はとても熱心に育児や家事に参加する方が増えているようです。
それは畑瀬先生のように熱心に働きかけて下さる方々のおかげかもしれません。
現場にいる先生から「崩壊」という言葉が出たのはショックですが、実際に身近で起っていることなのだと改めて状況の深刻さを知りました。
お産というのは赤ちゃんとお母さん、お父さんの絆づくりも大切ですが、それと同時に先生や助産師さん、そして医療現場で働く方々ともコミュニケーションをとり、妊婦さん自体も意識を変えて臨むことが大切だと学ぶことが出来ました。
取材/文章 西 美紗絵(Eu-D)